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アジア太平洋地域における労働組合権

4 October, 2016
Source: 
PSI
国際公務労連(PSI)のために - 国際労働組合権センター(ICTUR)と協力して作成された報告書
2014年9月に作成 - 2016年8月に改訂


1.1     アジア太平洋地域には約44億6千万人が居住しており、これは世界人口の60パーセントに相当する[1]。また世界の経済大国のうちの5か国-中国、日本、インド、韓国及びオーストラリア―があり、GDPは名目[2]でも購買力平価[3]でも全大陸のなかで最大である。さらには、インドや日本、中国などの国には、世界最大規模の労働組合のいくつかがある。

1.2     こうした印象的な数字にもかかわらず、アジア太平洋地域の多くの国は労働組合権の遵守という面では相対的に低調である。公共部門の労働組合も含めたすべての組合が、法的にも現実にも大きな障害に直面している。団体交渉が存在しない、あるいは範囲が制限されている国が多い、しかも団体交渉が存在する場合でも、組合参加権の制限や、実施手続きの欠如は一般的である[4]。本地域にみられる問題はほかにも、労働者が労働組合権を十分に行使できない「不可欠業務」の範囲が広範囲に設定されており、事実上公共部門全体が不可欠サービスに入っている場合もある。

1.3     ある程度、こうした制限は本地域がたどった発展の過程で形成されたものであり、またそうした過程を反映するものである[5]。たとえば、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール及び韓国では、協調組合主義と企業別労働組合が一般的である。オーストラリアニュージーランドでは、労働組合と労働法の明確なルーツは英国の制度にある(長年のうちに明らかに変わってきているが)。そしてバングラデッシュ、香港、インド、改革前のミャンマー、パキスタンおよびシンガポールの労使関係制度では、重複している部分が多い。中国、ラオス、モンゴル、北朝鮮及びベトナムなどのもうひとつのグループ、いわゆる社会主義計画経済の国々では、「党」と国家に根差す中央集権的あるいは独占的な労働組合形態である。

1.4     労働法が今なお強力なところでも、労働者の権利を行使し、履行するのは困難である。相対的に労働監督と法の執行に欠陥がある、そして他方では多くの国の組合は実力不足で社会対話や争議行動を通じて権利を行使することができない。ASEAN 人権宣言 (AHRD) と環太平洋経済連携協定(TPPA)によってさらに2つの難題が生まれており、これらは本地域の社会的および雇用モデルに深刻な影響を及ぼすものと思われる。

1.5     民営化や自由化、新しい成績評価モデル、および緊縮措置などのネオリベラル政策が公共部門労働者の労働条件に重大な影響を及ぼしており、不安定就労の増加は最も懸念される傾向のひとつである[6]

1.6     以下のセクションでは、これらのすべての課題についてもっと詳しく論じ、最後に討論に役立てるための意見と助言を提示する。

 

 (PDF版) アジア太平洋地域における労働組合権




[1] See www.worldpopulationreview.com (last visited 17 July 2016).

[2] World Bank, Gross domestic product ranking table (2015), available at: http://databank.worldbank.org/data/download/GDP.pdf (last visited 17 July 2016)

[4] PSI, Your Future in Public Hands (2013), p. 6.

[5] A good exposition of the influence of Asia’s diverse development paths on trade union structures and methods appears in Youngmo Yoon, A Comparative Study on Industrial Relations and Collective Bargaining in East Asian Countries, (2009) Working Paper no. 8 ILO Industrial and Employment Relations Department, at pages 1-11

[6] PSI, op.cit., p. 3